はじめに
最近、自分の園地の土づくりをどう考えるべきか改めて気になり、果樹栽培における堆肥の役割をいろいろ調べてみました。
普段の栽培では
- 化成肥料
- 有機質肥料
- 堆肥
を何となく使い分けていますが、改めて調べてみると「堆肥は肥料とは役割が違う」という説明がかなり多いことに気付きました。
実際、農業試験場の資料や栽培書でも
堆肥は養分供給よりも土壌環境の改善資材
という位置付けで説明されていることが多いです。
今回は、自分の理解を整理する意味も含めて
- 堆肥の種類
- 堆肥が土壌で果たす役割
- 果樹園での施用方法
について、できるだけ科学的な観点でまとめてみました。
あくまで自分の勉強メモ的な内容ですが、同じように気になっている人の参考になれば嬉しいです。
堆肥は「肥料」ではなく土壌改良資材という考え方
まず一番印象的だったのがこの点です。
堆肥は一般的に「有機肥料」と混同されがちですが、実際には役割が違います。
| 資材 | 主な役割 | 効き方 |
|---|---|---|
| 化学肥料 | 養分供給 | 即効性 |
| 有機質肥料 | 養分供給+緩効性 | 中〜緩効 |
| 堆肥 | 土壌改良 | 長期 |
つまり堆肥は
土の環境を作る資材
という位置付けになります。
研究資料では、堆肥の役割は主に次の3つに整理されています。
- 土壌物理性の改善
- 土壌化学性の改善
- 土壌生物性の改善
この3つがどういう意味なのか、順番に整理してみます。
堆肥の科学的役割① 土壌物理性の改善
まず最も大きな効果とされるのが団粒構造の形成です。
団粒構造とは
土壌は
- 砂
- シルト
- 粘土
などの粒子から構成されています。
そこに
- 腐植
- 微生物
- 粘質物質
が加わることで、小さな粒が集まり団粒という構造ができます。
この団粒が多い土壌では
- 排水性が良い
- 通気性が良い
- 保水性も高い
という状態になります。
つまり
水はけが良く、水持ちも良い
という理想的な状態になります。
果樹は永年作物で根が深く広がるため、この土壌構造がかなり重要になるようです。
特に
- 粘土質土壌 → 排水改善
- 砂質土壌 → 保水改善
という効果があると言われています。
堆肥の科学的役割② 化学性の改善
次に重要なのが腐植による保肥力の向上です。
堆肥が分解されると
- フミン酸
- フルボ酸
などの腐植物質が生成されます。
この腐植には
CEC(陽イオン交換容量)
を高める働きがあります。
CECとは簡単に言うと
肥料成分を保持する能力
です。
CECが高い土壌では
- カリウム
- カルシウム
- マグネシウム
- アンモニウム
などの養分を土壌が保持できます。
つまり堆肥は
肥料が効きやすい土壌を作る
という役割があります。
堆肥の科学的役割③ 生物性の改善
堆肥は微生物の餌にもなります。
堆肥を入れることで増える微生物には
- 放線菌
- 糸状菌
- 細菌
- 菌根菌
などがあります。
微生物が増えることで
- 有機物分解
- 養分循環
- 病原菌の抑制
などの作用が起きます。
特に果樹では
菌根菌
の働きが重要だとされていて、
リン酸などの吸収を助ける効果があるとされています。
果樹園で使われる主な堆肥の種類
調べてみると、堆肥は原料によってかなり性質が違います。
家畜ふん堆肥
牛ふん堆肥
特徴
- 有機物量が多い
- 分解が比較的穏やか
主な効果
- 団粒構造形成
- 保水性改善
果樹園で最も一般的な堆肥と言われています。
鶏ふん堆肥
特徴
- 窒素・リン酸が多い
- 即効性が強い
注意点
- ECが高い
- 塩類集積リスク
そのため
肥料的な使い方
になることが多いようです。
豚ぷん堆肥
特徴
- 成分バランスが比較的良い
- 牛ふんより肥料成分が多い
ただし塩分が高い場合もあるため注意が必要と言われています。
馬ふん堆肥
特徴
- 繊維質が多い
- 通気性改善効果が高い
粘土質土壌の改良に向くとされています。
植物質堆肥
バーク堆肥
樹皮を発酵させた堆肥です。
特徴
- 炭素量が多い
- 腐植形成が多い
- 効果が長期持続
ただし未熟だと
窒素飢餓
が起きる可能性があります。
もみ殻堆肥
特徴
- 通気性改善
- 排水性改善
ただし分解が遅く、養分供給はほとんどありません。
落葉堆肥
森林の落葉を発酵させたもの。
特徴
- 腐植が多い
- 微生物が豊富
果樹との相性が良い堆肥と言われています。
C/N比という指標
堆肥の品質を見る指標として
C/N比
があります。
| 状態 | C/N比 |
| 未熟堆肥 | 30以上 |
| 中熟堆肥 | 20〜30 |
| 完熟堆肥 | 10〜20 |
C/N比が高いと
微生物が分解の際に窒素を消費するため
窒素飢餓
が起きます。
そのため果樹園では
C/N比20以下の完熟堆肥
が推奨されることが多いようです。
果樹園での堆肥施用方法
果樹は根の分布が特徴的なので、施用方法も少し特殊です。
樹冠外周施肥
最も一般的な方法。
施用位置
枝の先端の真下
理由
果樹の吸収根(細根)は
樹冠外周付近に多い
ためです。
条施用
方法
- 溝を掘る
- 堆肥を投入
- 埋め戻す
根域に直接投入できる方法です。
全面施用
方法
- 園地全体に散布
- トラクターで混和
改植時などに多い方法です。
施用量の目安
一般的な指針では
10aあたり2〜4t
程度が多いようです。
ただし
| 土壌 | 施用量 |
| 砂質 | 多め |
| 粘土 | 少なめ |
など調整が必要とされています。
施用時期
多くの資料で共通していたのが
秋〜冬施用
です。
理由
- 微生物分解が進む
- 春に養分が利用可能
また果樹では
秋に根が成長する
という点も理由の一つのようです。
堆肥施用の注意点
未熟堆肥
未熟堆肥は
- 発熱
- 有機酸
- アンモニア
などによって
根傷み
を起こす可能性があります。
塩類集積
特に
- 鶏ふん
- 豚ぷん
ではEC上昇に注意が必要です。
入れすぎ
有機物でも過剰は問題になるそうです。
例
- 樹勢過強
- 病害増加
- 品質低下
今回調べて思ったこと
今回いろいろ調べてみて思ったのは
堆肥は肥料ではなく土壌の基盤作り
という考え方です。
整理すると
堆肥の役割は
1 土壌構造の改善
2 保肥力の向上
3 微生物活性化
で、
肥料とは役割が違う。
その上で
- 化成肥料
- 有機質肥料
を使って
樹勢や収量を調整する
という設計が合理的なのかな、と感じました。
まだまだ理解しきれていない部分も多いので、引き続き勉強していこうと思います。

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