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シャインマスカット栽培で使う3剤の意味を調べてみた

― ジベレリン・ストレプトマイシン・フルメットの作用機序 ―

大粒系の種なしブドウ、特にシャインマスカットを栽培していると、ほぼ必ず使う薬剤があります。

・ジベレリン
・ストレプトマイシン剤
・フルメット液剤

作業としては昔から当たり前のように行われている処理ですが、改めて考えると

「なぜこの3剤を使うのか」
「それぞれ何が起きているのか」

を深く理解している人は意外と少ない気がします。

私自身も栽培していて、

・なぜ種なしになるのか
・なぜ粒が大きくなるのか
・なぜ薬剤を混用するのか

を改めて理解しておきたいと思い、論文や資料をいろいろ調べてみました。

この記事は、自分の栽培理解を深めるための整理メモです。


大粒系種なしブドウ栽培の基本構造

まず整理すると、シャインマスカットなどの大粒系種なしブドウは

次の3つの技術の組み合わせで成立しています。

技術目的
ストレプトマイシン受精阻害(種なし化)
ジベレリン単為結果促進
フルメット果粒肥大

つまり

受精させない → それでも実を付けさせる → さらに粒を大きくする

という3段階の制御を行っています。

この仕組みを理解すると、薬剤の意味がかなり見えてきました。


①ストレプトマイシン剤を使う理由

(受精を止める)

ストレプトマイシンとは

ストレプトマイシンはもともと

抗生物質(アミノグリコシド系)

です。

細菌のタンパク質合成を阻害する作用があります。

農業では主に

・果樹の細菌病防除
・種なしブドウ処理

に使われています。


種なし化の仕組み

ブドウの種は

受精 → 胚形成 → 種子発達

という流れでできています。

しかしストレプトマイシンを処理すると

花粉管の伸長が阻害される

ことが知られています。

つまり

花粉が柱頭に付く

花粉管が伸びる

胚珠に到達

という過程が止まるため

受精が成立しない

状態になります。

その結果

種子が形成されない

というわけです。


なぜストレプトマイシンなのか

研究では

ストレプトマイシンは

・花粉管細胞のタンパク合成阻害
・ミトコンドリア機能阻害

などを起こすと言われています。

そのため

花粉管の伸長が途中で止まる

のです。

この処理がないと

シャインマスカットでも

普通に種が入る

可能性があります。



②ジベレリンを使う理由

(単為結果を起こす)

ジベレリンとは

ジベレリンは

植物ホルモン

の1つです。

主な作用

・細胞伸長
・発芽促進
・花芽形成
・果実肥大

などです。


単為結果とは

単為結果とは

受精なしで果実が発達する現象

です。

普通のブドウは

受精しないと

果実が落果

します。

しかしジベレリンを処理すると

植物体は

受精したと錯覚

します。


なぜ果実が発達するのか

通常、受精すると

胚が発達し

そこから

オーキシンやジベレリン

が分泌されます。

このホルモンが

果実の発達シグナル

になります。

ところが外部からジベレリンを与えると

受精がなくても

同じシグナルが出ます。

結果として

種なしでも果実が成長

します。

これが

ジベレリン処理による単為結果

です。



③フルメット液剤を使う理由

(果粒肥大)

フルメットとは

フルメットの有効成分は

ホルクロルフェニュロン(CPPU)

です。

これは

サイトカイニン様物質

です。


サイトカイニンの役割

サイトカイニンは

植物ホルモンの1つで

主な作用は

細胞分裂促進

です。

つまり

ジベレリンが

細胞を伸ばす

のに対して

フルメットは

細胞数を増やす

作用があります。


なぜ粒が大きくなるのか

果粒サイズは

基本的に

細胞数 × 細胞サイズ

で決まります。

薬剤作用
ジベレリン細胞伸長
フルメット細胞分裂

つまり

この2つを組み合わせると

粒が大きくなる

というわけです。



3剤を組み合わせる理由

ここまで整理すると

3剤の役割はかなり明確です。

薬剤目的
ストレプトマイシン受精阻害
ジベレリン単為結果
フルメット果粒肥大

この3つを組み合わせることで

大粒の種なしブドウ

が作れるという仕組みです。


実際の栽培で感じるポイント

調べていて改めて思ったのは

大粒系ブドウは

かなり高度に生理を制御している作物

だということです。

自然状態だと

・受精しない
・果実が落ちる

のが普通です。

そこに

植物ホルモンを使って

人工的に果実発達を誘導

しているわけです。

改めて見ると

かなり面白い技術だと思いました。


今後もう少し調べたいこと

今回調べてみて、

さらに気になったのは

・フルメット過剰時の副作用
・品種ごとの反応差
・高温年の反応変化

です。

特に最近は

高温による生理変化

が大きいので、

このあたりも今後調べてみたいと思っています。


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